第9章

相澤裕樹が樋口浅子を家まで送る道中、彼女は助手席で一言も発しなかった。うっかり相澤裕樹のプライバシーを漏らしてしまうのではないかと恐れていたのだ。

彼女のこの非協力的な態度に、相澤裕樹は自分の気持ちがどうなのか言葉にできなかった。

「そんなに彼のことが好きなのか?」相澤裕樹が突然口を開いた。

樋口浅子は顔を反対側に向けた。「あなたに関係ないでしょ?」

相澤裕樹はため息をついた。

このままでは説明しておかないと、樋口浅子のあの頑固な性格では——ロバ十頭引いても動かないほどの頑固さだ——帰ったらすぐに「囲む」関係を解消すると言い出しかねない。

相澤裕樹は思った。彼は樋口浅子との関係に...

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